必要な器具
- 5mol/L塩酸 (代用可 濃塩酸 もしくは市販品の2mol/L, 1mol/L塩酸)
- 1Lビーカ(代用可 ポリビーカ・オイルポット)
抽出に用いる0.5mol/L(0.5M)塩酸の調整に使う。
塩酸の濃度と価格は以下の通り(価格は販売元等により変わるので、あくまで一例と考えて下さい)。0.5M塩酸は1試料当り100mL使う。参考として1試料あたりの価格も載せておく。
容量 | 価格(円) | 希釈倍率 | 分析点数 | 一試料当たり の価格(円) | 備考 | |
---|---|---|---|---|---|---|
5mol/L塩酸 | 500mL | 1500 | 10 | 50 | 30 | 医薬用外劇物 |
濃塩酸 | 500mL | 700 | 23 | 115 | 6 | 医薬用外劇物 |
濃塩酸 | 4kg | 3100 | 23 | 780 | 4 | 医薬用外劇物 |
2mol/L塩酸 | 500mL | 1000 | 4 | 20 | 50 | |
1mol/L塩酸 | 3L | 3600 | 2 | 60 | 60 |
0.5M塩酸は、5mol/L塩酸100±1mL(108±1g)に水を加えて1L(1000±5g)にする。濃塩酸を希釈する場合、濃塩酸43.5mL(51.3g: 51〜52g)に水を加えて1L(1000±5g)にする。いずれも、濃度は厳密でなくてよい。
5mol/L塩酸、濃塩酸は揮発性の劇薬なので、手袋を必ず着用し、ドラフトがある場合はドラフト内で、無い場合は窓を開けて十分に換気をしながら作業を行なう。医薬用外劇物を使用したくない場合は、コストパフォーマンスは悪いが2mol/L塩酸、1mol/L塩酸を使う。
希釈に使う水は、可能なら脱塩水あるいは蒸留水を使う。入手が困難な場合は、ドラッグストアのベビー用品コーナーにある調乳用の水(ミネラル分を除去した水)等の市販品の脱塩水を使う。
脱塩水・蒸留水 | 市販品の調乳用の水 | 市販品のペットボトル入り ミネラルウォーター | 水道水 |
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○ | ○ | × | × |
- 秤
- 薬さじ(代用可 カレースプーン)
試料の分取に使う。試料の分取量が多いので、薬さじよりもカレースプーンの方が取り易い。抽出用の容器の口径によっては、薬包紙等に取ってから容器に移した方が良い。
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- 蓋付きプラスチック容器(250mL程度)(代用可 紙コップ)
- 100mLメスシリンダー(代用可 秤)
0.5M塩酸の分取、試料からの抽出に使う。メスシリンダーが無い場合は秤に抽出用容器を載せ、0.5M塩酸を100gはかり取る。
- 往復振とう器(代用可 マドラー、蓋付き容器の場合は手で振る)
- ろうと(φ75mm)(代用可 コーヒードッリッパー・1〜2人用)
- ろ紙(φ150mm, 5A)(代用可 コーヒーフィルター・1〜2人用)
- 蓋付きプラスチック容器(250mL程度)(代用可 ジャム瓶)
抽出液のろ過、保存に使う。
あった方が良い物品
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場合によっては必要な器具
点数が少なく、迅速に抽出 |
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鶏ふん堆肥中の尿酸態窒素について
鶏ふん堆肥のうち、「副資材の混和+堆肥化」を行っていないものには、アンモニウムイオン、MAPに含まれる窒素以外に、尿酸アンモニウムの形で窒素が存在する場合がある。そして、それに含まれる窒素も速効性である。速効性窒素は全窒素量から推定可能だが、抽出によっても推定できる。
尿酸「アンモニウム」のアンモニウムイオンを抽出するためには、抽出液のpHを1まで落とす必要がある。そのため、抽出に使う鶏ふん堆肥の量を半分(5g)にするか、抽出する塩酸の濃度を1mol/Lにする。また、これによりカルシウム含量が非常に多い場合でも、全カルシウムを抽出できるようになる。尿酸に含まれる窒素は、塩酸とpH5に調整した酢酸緩衝液で抽出されるアンモニア態窒素含量の差から推定する。計算方法は「5.分析値の利用方法」に記す。
なお、副資材を混和して堆肥化を行なっている鶏ふん堆肥では、牛ふん・豚ぷん堆肥同様、0.5M 塩酸抽出で速効性窒素を測定する。
必要な試薬
抽出に使う酢酸緩衝液は、水約800mlに酢酸(液体)20±0.5gと無水酢酸ナトリウム54.7g(または酢酸ナトリウム3水和物90.7g)を入れ溶かした後、1L(1025〜1030g)とする。測定項目はアンモニアのみなので、試薬調整に使う水は水道水でも構わないのだが、できれば塩酸の希釈に使ったものと同じ水を使う。 |
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脱塩水・蒸留水 | 市販品の調乳用の水 | 市販品のペットボトル入り ミネラルウォーター | 水道水 |
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○ | ○ | △ | △ |
抽出・測定の手順は0.5mol/L塩酸抽出と同様である。
手順
抽出用容器に堆肥を10〜20g分取する ・分取量は堆肥の状態により変える(注1) ↓ ・鶏ふん堆肥の場合、分取量を変えるか抽出液濃度を変える(注2) 0.5M塩酸を100mL加える (鶏ふん堆肥の酢酸緩衝液抽出の場合は酢酸緩衝液100mL) ↓ ・カルシウムを多く含む試料では、発泡に注意する(注3) 往復振とう器で1時間振とうする ・急ぐ場合は振とう時間を10分にする ↓ ・往復振とう器が無い場合は手で振る(注4) ・紙コップを使う場合はマドラーで混ぜる(注5) ・点数が少ない場合は調理用ミキサーを使うこともできる(注6) 直前に振り混ぜてから蓋付きプラスチック容器にろ過する (ろ液は10〜20mLあれば十分)
- 抽出液は密栓して冷蔵すれば長期保存可能
- 余分な抽出液は重曹等で中和後廃棄する
注1: 分取量は通常10gだが、水分が多く均一に混ぜるのが困難な場合、分取量を20gに増やす。全ての試料について、別途正確な水分量を測定する。
注2: 鶏ふん堆肥の場合の抽出液と分取量は以下の組み合わせ。塩酸抽出はどちらか一方を行えば良い。
- 0.5mol/L塩酸・100L ----- 堆肥5g
- 1mol/L塩酸・100mL ----- 堆肥10g
- 酢酸緩衝液・100mL ----- 堆肥10g
注3: 鶏ふん堆肥等、カルシウムが多く含まれる試料では、発泡が激しいので、溢れないよう塩酸を少しずつ加える。特に鶏ふん堆肥を1mol/L塩酸で抽出する場合は気を付ける。
注4: 1時間の間、15〜20分ごとに20秒程度激しく振る。
注5: 1時間の間、15〜20分ごとに20秒程度かき混ぜる。
注6: 点数が少ない場合や急ぐ場合、調理用ミキサーに試料と塩酸を加え、2分間処理してろ過してもよい。
※なお、振とうを簡便化した場合(振とう時間を10分に短縮した場合及び注4〜6の手法)、1時間往復振とうに比べ、リン酸・石灰・苦土の抽出量が5%ほど低下する場合がある。
目次
- 1. 試料の準備と水分量・粗灰分
- (1) 試料の準備
- (2) 水分(乾物率)
- (3) 粗灰分(通常不要)
- 2. RQフレックスの使い方
- 3. 無機成分分析
(速効性肥料成分) - (1) 0.5M塩酸抽出
- (2) 塩酸抽出液の希釈
- (3) アンモニアの測定
- (4) 硝酸の測定
- (5) リン酸の測定
- (6) カリウムの測定
- (7) カルシウムの測定
- (8) マグネシウムの測定
- (9) 堆肥中の成分量の算出
- 4. 簡易デタージェント分析
(緩効性窒素) - (1) 手順の概略
- (2) 0.2AD液での抽出処理
- (3) AD可溶有機物量の簡易推定
(パックテスト) - (4) AD可溶有機物量の簡易測定
(過マンガン酸カリウム滴定) - (5) AD可溶窒素の測定
- (6) 近赤外分光法によるAD可
溶有機物・AD可溶窒素の推定 - 5. 分析値の利用