抽出液に含まれる肥料成分量はRQフレックスでの測定範囲を越えているため、希釈して測定する。測定に用いる液量は 5mL(カルシウムは6mL、マグネシウムは0.5mL)である。ピペッターがある場合、5mL(カルシウムは6mL)になるように希釈する。無い場合は秤の上に100mLビーカ等の容器を載せ、抽出液と水を加えて希釈する。マグネシウムは希釈液を作った後、0.5mLを分取する。
なお、一度測定に使用した希釈液は、他の項目の測定には使うことができない。ピペッターで5mL(カルシウムは6mL)になるように希釈する場合、測定項目ごとに希釈する。秤で希釈した場合は希釈倍率が同じ別の項目に使うことができる。ただし、希釈液は保存中に変性することがあるので、保存が必要な場合は冷蔵保存し、可能な限り速やかに測定する。希釈倍率の目安は以下の通り。
希釈倍率の目安は以下の通り。
NO3 1) | Mg 2) | NH4 | PO4 | Ca | K | |
---|---|---|---|---|---|---|
測定範囲(mg/l) | 5-225 | 5.0-50 | 0.2-7.0 | 5-120 | 2.5-45.0 | 1.0-25.0 |
牛ふん堆肥 | 20倍 | 50倍 | 100倍 | 200倍 | ||
豚ぷん堆肥 | 20倍 3) | 50倍 | 200倍 | |||
鶏ふん堆肥 4) (0.5M塩酸100mL - 5g) | 測定不要 5) | 50倍 | 200倍 |
1) 測定範囲が3-90mg/lの試験紙を用いた場合、希釈倍率を50倍にする。
2) マグネシウムテストの測定レンジは5-50mg/lとなっているが、共存するリン酸により発色剤が凝集し結果が高めになるため、25mg/lを上限とする。
3) 密閉縦型方式で製造された豚ぷん堆肥は測定不要。
4) 鶏ふん堆肥10gを1M塩酸100mLで抽出した場合、Caの希釈倍率のみ 500倍に変更する。
5) 副資材を加えて十分堆肥化している場合は、20倍希釈で測定した方がよい。
レンジを越えた場合(HIという表示が出る)、希釈倍率を上げて再度測定する。
必要な試薬・器具
- ピペッター(容量20〜100μL、200〜1000μL、1000〜5000μL)(代用可 秤、紙コップ・ビーカ等の容器、駒込ピペット・スポイト等)
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・バイアルラック 多点数を希釈する際に、倒れたり間違えたりしないためには、ラックがあった方が良い。 |
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※希釈に使う水について
希釈に使う水は、可能なら脱塩水・蒸留水を用いる。脱塩水・蒸留水の製造装置が無い場合は、ドラッグストアのベビー用品コーナーにある調乳用の水(ミネラル分を除去した水)等の市販品の脱塩水を用いる。それも入手困難な場合は、市販品のミネラルウォーターや水道水を用いる。ミネラルウォーター・水道水の場合、水のみで測定し、その測定値を希釈試料の測定値から差し引く。
ただし、カルシウムはミネラルウォーター・水道水中の含有量が高く、測定上限値の2割〜5割程度の場合が多い。そのような水で測定レンジに入るように希釈するのは困難なため、使用しない。また、硝酸、カリウム、マグネシウムについても高い場合があるので、事前に確認し、測定上限値の 10% 未満の場合のみ使用する。
脱塩水・蒸留水 | 市販品の調乳用の水 | 市販品のペットボトル入り ミネラルウォーター | 水道水 |
---|---|---|---|
○ | ○ | △ 1) | △ 1) |
1) カルシウムを測定する場合は使用しない。硝酸、カリウム、マグネシウムを測定する場合、含量が測定上限値(硝酸: 225/90 mg/l, カリウム, マグネシウム: 25 mg/l)の10%未満であることを事前に確認しておく。アンモニアを測定する場合、標準液の希釈にも同じ水を使う。
市販品のミネラルウォーターにはカルシウム、マグネシウムの表示はあるが、カリウムの表示は無い場合もあり、硝酸の表示はない。表示が無くても含まれているので、必ず確認する。なお、表示が100mL あたりの数値の場合も多いため、1L あたりに換算して測定上限値と比較する。また、採取時期により含量が異なる場合があるため、できる限り一度の測定には一本のペットボトルからの水を使う。やむを得ず複数本になる場合は、あらかじめ混合してから使う。
手順〜ピペッターを使う場合
分取量の目安は以下の通り
希釈倍率 | 抽出液用 ピペッター | 分取量 | 脱塩水用 ピペッター | 分取量 |
---|---|---|---|---|
20 | 200〜1000μL | 250μL | 1000〜5000μL | 4750μL |
50 | 20〜100μL | 100μL | 1000〜5000μL | 4900μL |
100 (Ca) | 20〜100μL | 60μL | 1000〜5000μL | 2970μL x 2回 |
200 | 20〜100μL | 25μL | 1000〜5000μL | 4975μL |
希釈倍率が200倍を越える場合、脱塩水を正確に分取出来ない可能性があるので、まず20倍希釈し、その後最終的な希釈倍率になるように希釈した方が良い。
希釈倍率 | 抽出液用 ピペッター | 分取量 | 脱塩水用 ピペッター | 分取量 |
---|---|---|---|---|
20 | 200〜1000μL | 250μL | 1000〜5000μL | 4750μL |
最終倍率 | 20倍希釈液用 ピペッター | 分取量 | 脱塩水用 ピペッター | 分取量 |
---|---|---|---|---|
200 | 200〜1000μL | 500μL | 1000〜5000μL | 4500μL |
200 (Ca) | 200〜1000μL | 600μL | 1000〜5000μL | 2700μL x 2回 |
500 (Ca) | 200〜1000μL | 240μL | 1000〜5000μL | 2880μL x 2回 |
手順は以下の通り ピペッターの分取量を合わせる ↓ 抽出液を分取する ↓ RQフレックス測定用の容器に入れる ↓ 脱塩水を分取する ↓ RQフレックス測定用の容器に入れる ↓ 蓋をしてよく振り混ぜる
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ピペッターを使わない場合:
ピペッターを使わない場合は、秤に容器を載せ、重量を見ながら抽出液と脱塩水を加えて希釈する。なお、分取量・総重量は比率を変えない限り変えてよい(抽出液量が少ない場合等)。
希釈倍率 | 抽出液分取量 | 総重量 |
---|---|---|
20 | 5.0g | 100g |
50 | 2.0g | 100g |
100 | 1.0g | 100g |
200 | 0.50g | 100g |
500 | 0.20g | 100g |
駒込ピペットでは分取量の下限が0.05g程度である。誤差範囲の±0.05gを確保するため、表では希釈倍率が100倍以上の場合、抽出液の分取量・総重量を増やしている。より少量の抽出液を分取できるのなら、分取量・総重量を小さくしてもよい(例: 抽出液1.0±0.02g, 総重量 100±1g で100倍希釈)。
手順は以下の通り 秤にビーカ・紙コップ等の希釈用容器を載せる ↓ ゼロセットをする ↓ 駒込ピペット・スポイト等に抽出液を取る ↓ 必要な重量だけ抽出液を希釈用容器に入れる ↓ 総重量になるまで脱塩水を加え、秤から降ろす 最後の方は駒込ピペット等で滴下した方がよい ↓ 秤にRQフレックス測定用の容器を載せる ↓ ゼロセットをする ↓ 混合しながら駒込ピペット・スポイト等に希釈液を取る ↓ 必要な重量だけ希釈液をRQフレックス測定用容器に入れる
(注)駒込ピペット・スポイト等を使い回す必要がある場合、脱塩水ですすぎ、一度分取する溶液でとも洗いした後、分取する。
目次
- 1. 試料の準備と水分量・粗灰分
- (1) 試料の準備
- (2) 水分(乾物率)
- (3) 粗灰分(通常不要)
- 2. RQフレックスの使い方
- 3. 無機成分分析
(速効性肥料成分) - (1) 0.5M塩酸抽出
- (2) 塩酸抽出液の希釈
- (3) アンモニアの測定
- (4) 硝酸の測定
- (5) リン酸の測定
- (6) カリウムの測定
- (7) カルシウムの測定
- (8) マグネシウムの測定
- (9) 堆肥中の成分量の算出
- 4. 簡易デタージェント分析
(緩効性窒素) - (1) 手順の概略
- (2) 0.2AD液での抽出処理
- (3) AD可溶有機物量の簡易推定
(パックテスト) - (4) AD可溶有機物量の簡易測定
(過マンガン酸カリウム滴定) - (5) AD可溶窒素の測定
- (6) 近赤外分光法によるAD可
溶有機物・AD可溶窒素の推定 - 5. 分析値の利用
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