通風乾燥器使用
堆肥の成分量を算出する場合、乾物率を測定する必要がある。通風乾燥器がある場合は、135℃で2時間、あるいは105℃で一夜乾燥させる。
必要な器具
- 秤
- 紙製の空箱(ろ紙、ティッシュペーパー等)
- 乾燥用の皿(ホーローバット・乾燥皿・シャーレ等)(代用可 アルミホイル)
試料が均一で無い場合も多いので、バットや蒸発皿、シャーレ等、比較的大きめの容器で乾燥させる。
手順
乾燥用の皿を秤量する(A) ↓ 堆肥10~50gを皿に取り秤量する(B)(注) ・厚くすると乾きにくいので、できるだけ薄く広げる ↓ (特に水分が多いもの) 135℃に設定した通風乾燥器で2時間乾燥させる ・堆肥によっては、臭気が強い場合がある。周囲に迷惑が ↓ かかる場合は、105℃で一夜乾燥させた方が良い ・水分が多く乾きにくいものも105℃一夜乾燥の方が良い 秤に紙の空箱を載せ、ゼロセットする ・熱いので軍手を使用する ↓ ・熱いものを直接秤に載せると秤が傷むため、空箱を置く 通風乾燥器から皿を取り出し、秤の上の空箱に載せる ↓ 重量を記録する(C) (注)堆肥の性状によって分取量を変える。均一な風乾試料では10g程度でも良いが、 不均一な場合は最低20g、未風乾試料の場合は30〜50g分取する。
計算方法
乾物率(%)・水分(%)は次の式で計算する A: 皿の重量 B: 皿+乾燥前の試料の重量 C: 皿+乾燥試料の重量 乾物率(%)=100 ×(C - A)÷(B - A) 水分(%)=100 - 乾物率
電子レンジ使用
通風乾燥器が無い場合、点数が少なく迅速に数値を出したい場合は電子レンジを用いて乾燥させる。
必要な試薬・器具
- 秤
- 磁製の皿(カレー皿等)(代用可 電子レンジ使用可能表示のある耐熱性ポリプロピレン容器)
秤の測定上限をカレー皿のみで越える場合は代用品を使う。
- 薬さじ(代用可 カレースプーン)
- 平筆
- 2%塩化コバルト(II)溶液
塩化コバルト(II) 1gを50mLの水に溶かす(長期保存可) - 白紙、ガラス棒(代用可 マドラー)
塩化コバルト(II)は湿り気がある場合は薄いピンク色だが、乾燥すると青色になる。それを利用して、白紙にガラス棒で2%塩化コバルト(II)溶液の線を引き、乾かして水分蒸発のインジケータとして使用する。
乾燥前 | 乾燥後 |
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インジケータ用紙は皿に乗る程度の大きさに切り、丸まり防止のため両端を5mm程度山折りにする。1試料につき1枚作成して使う。乾燥に時間がかかるので、まとめて作っておくと良い。
- 電子レンジ
インジケータ用紙の薄いピンク色が青色へ変化するのを観察する必要があるため、中の様子が良く見える機種が望ましい。 |
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手順
皿を秤量する(A) ↓ 堆肥10〜50g程度を薄く均一に広げ秤量する(B)(注) ↓ 電子レンジ(弱か解凍)で1分間加熱する ・ポリプロピレン容器の場合、壁面に水滴が付着する (繰り返せば蒸発する) ↓ ・加熱が強すぎると皿の底にこびり付くので注意する 皿を取り出し、スプーンで混和する スプーンに付いた堆肥は平筆で皿に落とす ↓ ・磁性の皿は熱くなるので、軍手等を使う 電子レンジ(弱か解凍)で1分間加熱する ・この操作を湿り気が無くなるまで繰り返す ↓ 湿り気が無くなったらインジケータ用紙を試料表面に密着させる ↓ 電子レンジ(弱)で加熱する ↓ ・解凍モードでは十分に乾燥するまで時間がかかりすぎる インジケータ用紙のピンク色の線が青色に変色したら加熱を止める ↓ 皿を取り出し、こびり付きを防ぐために皿をゆする インジケータ用紙の線はしばらくするとピンク色に戻る ↓ 電子レンジ(弱)で加熱する ・加熱〜取り出してゆするという動作を繰り返す ↓ インジケータ用紙の色が戻りにくくなり、 電子レンジでの加熱後 5秒程度で青色になるようになったら、秤量する ↓ 秤量と加熱を数回繰り返し、重量が安定したら乾燥完了 重量を記録する(C) (注)堆肥の性状によって分取量を変える。均一な風乾試料では10g程度でも良いが、 不均一な場合は最低20g、未風乾試料の場合は30〜50g分取する。
計算方法
乾物率(%)・水分(%)は次の式で計算する A: 皿の重量 B: 皿+乾燥前の試料の重量 C: 皿+乾燥試料の重量 乾物率(%)=100 ×(C - A)÷(B - A) 水分(%)=100 - 乾物率
水分が多い試料の乾燥
水分量が70%を越えるような試料は、そのまま電子レンジで乾燥させるのは困難なため、試料の一部を風乾し、均一になるように混合した後、上記の電子レンジを用いた手法で乾燥させる。
必要な器具
- 秤
- 磁製の皿(カレー皿等)(代用可 耐熱性ポリプロピレン容器、アルミホイル)
- 薬さじ(代用可 カレースプーン)
- 調理用ミキサー、乳鉢
手順
皿を秤量する(D) ↓ 堆肥50g程度を薄く均一に広げ秤量する(E) ↓ 雨の当たらない屋外等に放置し乾燥させる ↓ 乾燥したら秤量し、重量を記録する(F) ↓ 試料を乳鉢・調理用ミキサー等で粉砕・混合する ↓ 電子レンジ乾燥用の皿を秤量する(A) ↓ 試料の一部を取り(B)、電子レンジを用いて乾燥させる(前項参照) ↓ 乾燥が完了したら重量を記録する(C)
計算方法
乾物率(%)・水分(%)は次の式で計算する D: 皿の重量 E: 皿+未風乾試料の重量 F: 皿+風乾燥試料の重量 A: 皿の重量 B: 皿+風乾試料の重量 C: 皿+乾燥試料の重量 乾物率(%)=100 ×(F-D)×(C-A)÷(B-A)÷(E-D) 水分(%)=100 - 乾物率
2段階で乾燥させた場合の乾物率の計算について
風乾に用いた現物試料の重量: E-D 風乾後の重量: F-D そこから B-A を分取し、乾燥させた 乾燥後の重量: C-A |
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風乾に用いた現物試料全体
に含まれる乾燥後の試料:
(F-D)×(C-A)÷(B-A)
↓
風乾に用いた現物試料の乾物率(%):
100 × 乾物重量 ÷ 現物重量 =
100 × {(F-D)×(C-A)÷(B-A)} ÷ (E-D)
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※ 堆肥中の水分と成分の表記に関して
堆肥中の水分及び肥料成分量の表記に関して、ここに概説する。
この文書では、分析後に計算して算出する肥料成分供給量は kg/ton、即ち「堆肥1トンを施用した場合に、圃場に入る肥料成分量(kg)」である。施肥設計への利用を考えてこのような表記にしている。ただし、水分については%表示にしてある。

表の上段は「現物1トンを施用した場合」、下段は「乾物1トンを施用した場合」の数値である。分析直後に施用する場合は「現物あたりの肥料成分供給量」を元に計算すれば良い。長期間保管後に施用する場合、保管中に水分量が変化することがあるため、施用直前に再度水分量を測定し、以下の式から肥料成分供給量を計算する。
乾物率 = 100 – 再度測定した水分量(%) 肥料成分供給量 = 乾物あたりの肥料成分供給量 x 乾物率 ÷ 100
通常、肥料成分量は%で表示されている。kg/tonと%の変換は、次のように行う。
% = kg/ton ÷ 10 / kg/ton = % x 10
また、報告書等では水分は現物中の%で、肥料成分量は乾物中の%で表示されている場合が多い。

その場合、現物1トンあたりの肥料成分供給量(kg)を計算する場合、単位の変換と水分量の補正が必要となる。
現物1トンあたりの肥料成分供給量(kg)= 乾物中の肥料成分量(%)x 10 x(100 - 現物中の水分(%))÷ 100
袋詰めされた堆肥の場合、肥料成分量(%)は乾物あたりの%の場合(下左図)、現物あたりの%の場合(下右図)、乾物・現物表記が無い場合がある。そのため、表示をしっかり確認する必要がある。表記が無い場合は、通常現物あたりの成分量である。


なお、現物あたりの%表示の場合、現物1トン当たりの肥料成分供給量は、次のように計算する。
現物1トンあたりの肥料成分供給量(kg)= 肥料成分量(%)x 10
目次
- 1. 試料の準備と水分量・粗灰分
- (1) 試料の準備
- (2) 水分(乾物率)
- (3) 粗灰分(通常不要)
- 2. RQフレックスの使い方
- 3. 無機成分分析
(速効性肥料成分) - (1) 0.5M塩酸抽出
- (2) 塩酸抽出液の希釈
- (3) アンモニアの測定
- (4) 硝酸の測定
- (5) リン酸の測定
- (6) カリウムの測定
- (7) カルシウムの測定
- (8) マグネシウムの測定
- (9) 堆肥中の成分量の算出
- 4. 簡易デタージェント分析
(緩効性窒素) - (1) 手順の概略
- (2) 0.2AD液での抽出処理
- (3) AD可溶有機物量の簡易推定
(パックテスト) - (4) AD可溶有機物量の簡易測定
(過マンガン酸カリウム滴定) - (5) AD可溶窒素の測定
- (6) 近赤外分光法によるAD可
溶有機物・AD可溶窒素の推定 - 5. 分析値の利用