RQフレックスでの測定値は、抽出溶液中の含量(mg/L)である。施肥設計を行なうためには、堆肥中の成分量に換算する必要がある。「5. 分析値の利用方法」では表計算ソフトで計算するが、無機成分は簡単に手計算できるので、その方法をここに載せる。

使用した堆肥の乾物重・水分量の計算

換算にあたって、まず、抽出に使用した試料の重量と、1-(2)で測定した乾物率(%)から、抽出に使用した堆肥中の乾物重と水分量を計算する。

乾物重(g) = 試料重量(g) x 乾物率(%) ÷ 100
水分量(g) = 試料重量(g) - 乾物重(g)

そして、次の式で、抽出倍率を計算する。

抽出倍率 = (100 + 水分量) ÷ 乾物重

乾物率を測定していない場合は、試料重量をそのまま計算に使う。ただし、その場合、計算結果には誤差が入る(後述)。

抽出倍率 = 100 ÷ 試料重量(g)

測定値の補正

アンモニア、硝酸の測定において、標準液を測定した場合、各項目に記載されている方法で補正しておく。

この分析では、カリウムは低濃度で値が高く出る傾向があるため、測定結果が1〜3ppmの場合は、測定値から1を引く。

また、測定対象を含むミネラルウォーター、水道水を希釈に使用した場合、その水の測定値を試料の測定値から差し引いておく。

堆肥中の成分量の計算

以下の式で、堆肥(乾物)中の成分量(kg/t)に換算する。なお、乾物率が未測定で、抽出倍率に試料重量を使った場合、この計算結果が堆肥(現物)中の成分量になる。また、計算式中の補正値はこの測定での経験的な値のため、堆肥以外の測定結果には適用しない。

アンモニア態窒素=補正値×(希釈倍率÷1000)×抽出倍率x0.777
(0.777は NH4 からNH4-Nへ換算するための係数)

なお、鶏ふん堆肥(副資材なし)の尿酸態窒素は次の式で推定する。
尿酸態窒素 =(塩酸抽出アンモニア態窒素 - 酢酸緩衝液抽出アンモニア態窒素)x 4.7 - 2.6
(マイナスの場合は0とする)

硝酸態窒素=測定値(補正値)×(希釈倍率÷1000)×抽出倍率×0.226
(0.226はNO3からNO3-Nへ換算するための係数)


リン酸(P2O5)=測定値×(希釈倍率÷1000)×抽出倍率×0.747×1.1
(0.747は PO4 からP2O5へ換算するための係数, 1.1は補正値)


カリ(K2O)=測定値×(希釈倍率÷1000)×抽出倍率×1.205×0.85
(1.205はKからK2Oへ換算するための係数, 0.85は補正値)


石灰(CaO)=測定値×(希釈倍率÷1000)×抽出倍率×1.399
(1.399はCaからCaOへ換算するための係数)


苦土(MgO)=測定値×(希釈倍率÷1000)×抽出倍率×1.658
(1.658はMgからMgOへ換算するための係数)

堆肥(現物)中の成分量は乾物率(%)を使い次のように計算する。

成分量(現物)= 成分量(乾物)x 乾物率 ÷ 100

乾物率を使わなかった場合の誤差について

水分量が多い場合

赤: 抽出液 100mL
水色+茶色: 堆肥 10g(現物, 乾物率50%)
水色: 堆肥中の水分(5g);  茶色: 堆肥中の乾物(5g)

この抽出液の測定値×希釈倍率÷1000が Aの場合、堆肥乾物あたりの含量は

A x 抽出液量 ÷ 堆肥(乾物)量 = A x (100+5) ÷ 5 = A x 21

現物の乾物率は 50% なので、堆肥現物あたりの含量は

A x 21 x (50/100) = A x 10.5

乾物率を考慮せずに計算すると、堆肥現物あたりの含量は

A x 抽出液量 ÷ 堆肥(現物)量 = A x 100 ÷ 10 = A x 10

乾物率を考慮した場合より値が小さい。正しいのは乾物率を考慮した場合。


水分が多い場合、誤差が大きくなる。

水分量が多い場合

赤: 抽出液 100mL
水色+茶色: 堆肥 10g(現物, 乾物率25%)
水色: 堆肥中の水分(7.5g);  茶色: 堆肥中の乾物(2.5g)
堆肥乾物あたりの含量= A x (100+7.5) ÷ 2.5 = A x 43
堆肥現物あたりの含量= A x 43 x (25/100) = A x 10.75

乾物率を考慮せずに計算した場合の堆肥現物あたりの含量
                     = A x 100 ÷ 10 = A x 10