硝酸態窒素は、家畜ふん堆肥の腐熟が十分進んで易分解性有機物が無くなった後に、アンモニア態窒素から生成される。従って、通常は密閉縦型方式で製造された豚ぷん堆肥、鶏ふん堆肥では測定不要である。ただし、鶏ふん堆肥でも、他の家畜ふん・副資材と混ぜてしっかり堆肥化したものでは、測定した方が良い。
必要な試薬・器具
- RQ フレックス (プラスで無くても良い)
- リフレクトクアント 硝酸テスト(5-225mg/l) ※要冷蔵(代用可 硝酸テスト(3-90mg/l)) ※要冷蔵
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硝酸テスト(5-225mg/l)は温度の影響を強く受けるので、出来るだけ温度変化の少ない部屋で測定を行う。また、リフレクトクアントは冷蔵保存なので、測定前に冷蔵庫から出して室温に戻しておく。試料も同様に室温に戻しておく。
・蓋付き小型容器(5~10mL) |
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場合によっては必要な器具
・ストップウォッチ 連続測定を行う場合に使う。 |
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- 硝酸性窒素標準液(NO3-N又はNO3で1000ppm)
(代用可 硝酸カリウム、硝酸ナトリウム等の試薬・特級+100mLメスフラスコ)
硝酸テストでの測定結果は、ロットにより±10%程度の誤差がある。そのため、より正確な量を把握したい場合は、硝酸性窒素標準液を希釈して標準液を作り、測定結果を補正する。
NO3-Nで1000ppmの標準液は40倍に希釈してNO3-N 25mg/L(NO3 111mg/L)にする。NO3で1000ppmの場合は10倍に希釈してNO3 100mg/Lにする。硝酸テスト(3-90mg/l)を使う場合は、希釈倍率を上記の2倍にする。
市販品の標準液が無い場合は、100mLメスフラスコに乾燥した硝酸カリウム0.722g(あるいは硝酸ナトリウム0.607g)を入れ、脱塩水を標線まで加えて溶かし、NO3-N 1000ppmの標準液とする。これを40倍する。
メスフラスコが無い場合、ビーカ等の容器に希釈用の水を100±0.05g取り、そこに上記の量の試薬を加え、ガラス棒等で撹拌して溶かし、NO3-N 1000ppmの標準液とする。これを40倍する。
手順〜通常測定
RQ フレックス での測定の際の液量は指定されていないが、試験紙の測定部位がしっかり浸るためには、5mL程度は必要である(容器の大きさにより異なるので、事前に確認しておく)。 「3-(2) 塩酸抽出液の希釈」を参照し、希釈試料を準備しておく。なお、希釈倍率の目安は以下の通りである。
- 牛ふん堆肥・豚ぷん堆肥(密閉縦型方式以外): 20倍
- 鶏ふん堆肥・豚ぷん堆肥(密閉縦型方式): 測定不要
リフレクトクアント 3-90mg/lを使う場合、希釈倍率を50倍にする。測定手順は 5-225mg/lの場合と同じである。
希釈に使う水は、可能なら脱塩水あるいは蒸留水を使う。入手が困難な場合は、ドラッグストアのベビー用品コーナーにある調乳用の水(ミネラル分を除去した水)を使う。それも入手困難な場合は、市販品のミネラルウォーターや水道水を用いる。その場合、事前に水に含まれる硝酸濃度を測定し、測定上限値の10%未満の場合のみ使用する。また、測定後に試料の測定値から水の測定値を差し引く。標準液による補正を行なう場合、同じ水で標準液を調整する。
脱塩水・蒸留水 | 市販品の調乳用の水 | 市販品のペットボトル入り ミネラルウォーター | 水道水 |
---|---|---|---|
○ | ○ | △ | △ |
希釈した標準液は5mL程度を測定用容器に入れる(反復を取ることが望ましい)。希釈にミネラルウォーター、水道水を使った場合、希釈に使った水も5mL程度を測定用容器に入れる(反復を取ることが望ましい)。これらは希釈試料と同様に測定する。
手順は以下の通り 本体のON/OFFボタンを押し電源を入れる ↓ 付属のバーコードを入れる 3桁の数値が表示される ↓ ・数値が表示されたら、すぐにバーコードを抜き取っても良い STARTボタンを押し測定スタンバイにする 60secと表示される ↓ 試験紙容器から試験紙を1枚すばやく取り出し、容器の蓋を閉める ↓ 試験紙を希釈試料に浸すと同時にSTARTボタンを押す ・ちゃんと測定待ち時間が表示されているか ↓ 確認してから試験紙を浸す 測定待ち時間が減り始める ↓ 2秒後に試験紙を取り出す ↓ 余分な液を横や裏からティッシュペーパー等に吸わせる ↓ 表示が10sec(残り10秒)くらいになったら 試験紙を測定部位に挟む ↓ 表示が5sec(残り5秒)になったらアラームが連続で鳴り続ける ↓ 表示が0secになるとアラームの後に測定値が表示される ↓ 測定値を書き取る ↓ 測定部位から試験紙を取り出す ↓ TEST、STARTの順にボタンを押して測定スタンバイにする ↓ 次の希釈試料に試験紙を入れ、この要領で順次測定を行う ↓ 測定が終わったらON/OFFボタンで電源を切る バーコードの抜き取りは忘れないこと
- 測定値が HI の場合希釈倍率を上げて再度測定する。
- 測定値が LO の場合、硝酸態窒素量0.25kg/t以下であり、肥料成分として無視出来る量である。
- アダプターは水又はエタノールで洗浄しておく。
- 試験紙は地域のプラスチックごみの処理方法に準じて処分する。
- 廃液は弱酸性なので、そのまま下水に流して構わない。
連続測定
測定待ち時間は60秒だが、試薬を入れて混合しないため、ストップウォッチを準備して連続的に測定することができる。一人で行う場合は4試料ずつの測定になるが、二人組で行えば途中で中断すること無く連続的に測定できる。以下の手順は一人の場合である。
本体のON/OFFボタンを押し電源を入れる ↓ 付属のバーコードを入れる 3桁の数値が表示される ↓ ・数値が表示されたら、すぐにバーコードを抜き取っても良い STARTボタンを押し測定スタンバイにする 60secと表示される ↓ 試験紙容器から試験紙を1枚すばやく取り出し、容器の蓋を閉める ↓ 試験紙を希釈試料に浸すと同時にSTARTボタン、 ストップウォッチのボタンを押す ↓ 測定待ち時間が減り始める ↓ 2秒後に試験紙を取り出す ↓ ティッシュペーパー等に余分な液を吸わせる 試験紙は別のティッシュペーパー等の上に置く ↓ 試験紙容器から試験紙を1枚すばやく取り出し、容器の蓋を閉める ↓ ストップウォッチ表示が15秒になったら 試験紙を希釈試料に浸す ↓ 2秒後に試験紙を取り出す ↓ ティッシュペーパー等に余分な液を吸わせる 試験紙は別のティッシュペーパー等の上に置く ↓ ・順番が分からなくならないように注意して並べる 試験紙容器から試験紙を1枚すばやく取り出し、容器の蓋を閉める ・15秒ごとのこの操作を最後の試料(最大4点・45秒)まで行う ↓ RQフレックスの表示が10sec(残り10秒)くらいになったら 試験紙を測定部位に挟む ↓ RQフレックスの表示が5sec(残り5秒)になったら アラームが連続で鳴り続ける ↓ RQフレックスの表示が0secになるとアラームの後に測定値が表示される この時、ストップウォッチの表示は1分 ↓ 測定値を書き取る ↓ 測定部位から試験紙を取り出し、次の試料の試験紙を挟む ↓ ストップウォッチの表示が1分15秒になったらSTARTボタンを押す ・間違えてTESTボタン、ON/OFFボタン ↓ を押さないように気を付ける 測定値が表示されるので書き取る ↓ 測定部位から試験紙を取り出し、次の試料の試験紙を挟む ↓ ストップウォッチの表示が1分30秒になったら STARTボタンを押す ↓ 測定値が表示されるので書き取る ↓ 測定部位から試験紙を取り出し、次の試料の試験紙を挟む ・15秒ごとのこの操作を最後の試料(最大4点・45+60秒=1分45秒)まで行う
標準液の測定結果を元に測定値を補正する場合は、以下のように計算する。 標準液の測定(平均)値: b 標準液の濃度: c(NO3-N 1000ppmの40倍希釈: 111、NO3 1000ppmの10倍希釈: 100) 補正値 = 測定値 x c ÷ b
硝酸態窒素が含まれている水で希釈した場合、次の式で補正する (標準液を使っていない場合は単純に水の測定値を差し引く)。 希釈に使った水の測定(平均)値: a 標準液の測定(平均)値: b 標準液の濃度: c(NO3-N 1000ppmの40倍希釈: 111、NO3 1000ppmの10倍希釈: 100) 補正値 = (測定値 - a) x c ÷ (b - a)
堆肥現物中の硝酸態窒素量(kg/t)への変換は 3-(9) を参照。
目次
- 1. 試料の準備と水分量・粗灰分
- (1) 試料の準備
- (2) 水分(乾物率)
- (3) 粗灰分(通常不要)
- 2. RQフレックスの使い方
- 3. 無機成分分析
(速効性肥料成分) - (1) 0.5M塩酸抽出
- (2) 塩酸抽出液の希釈
- (3) アンモニアの測定
- (4) 硝酸の測定
- (5) リン酸の測定
- (6) カリウムの測定
- (7) カルシウムの測定
- (8) マグネシウムの測定
- (9) 堆肥中の成分量の算出
- 4. 簡易デタージェント分析
(緩効性窒素) - (1) 手順の概略
- (2) 0.2AD液での抽出処理
- (3) AD可溶有機物量の簡易推定
(パックテスト) - (4) AD可溶有機物量の簡易測定
(過マンガン酸カリウム滴定) - (5) AD可溶窒素の測定
- (6) 近赤外分光法によるAD可
溶有機物・AD可溶窒素の推定 - 5. 分析値の利用
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